日本国外に住んだまま日本法人を設立できる?条件と注意点
結論から言うと、日本国外に居住したままでも、日本で会社を設立することは可能です。かつては代表取締役のうち最低1人は日本に住所を有していなければならないという制約がありましたが、現在この取扱いは廃止されており、代表取締役全員が海外居住者であっても法人の設立登記を申請できます。ただし、実務上はいくつか押さえておくべき注意点があります。
海外居住者による会社設立の基本的な流れ
海外に居住する方が日本で株式会社を設立する場合、大まかな流れは日本在住者の場合と大きくは変わりません。会社の基本事項(商号、資本金、事業目的、本店所在地など)を決め、必要書類を準備し、定款を作成して認証を受けた上で、法務局に登記申請を行います。
ただし、書類のやり取りが国際郵便を介することになるため、必要書類が揃ってから登記完了までの期間は、役員が全員日本国内に居住している場合の2週間程度に対し、海外在住の役員がいる場合は4週間程度を見込んでおくのが現実的です。
印鑑証明書の代わりに必要になるもの
日本の会社設立手続きでは、発起人や設立時取締役の印鑑証明書が必要になりますが、多くの国には印鑑証明という制度自体が存在しません。この場合、代わりに本国の公的機関や日本国内の公証役場で取得できるサイン証明書(宣誓供述書)を用いて対応します。
登記申請書に外国語で作成された書類を添付する場合は、原則としてすべてに日本語訳を添付する必要がある点もあわせて押さえておきましょう。
資本金の払込みで気をつけたいこと
会社設立の手続きにおいて、資本金は発起人名義の日本国内の銀行口座に払い込む必要があります。海外に居住している場合、この日本国内の個人口座をどう用意するかが最初のハードルになります。
すでに日本国内に口座をお持ちであれば問題ありませんが、お持ちでない場合は、日本に居住する協力者(家族や信頼できるパートナーなど)の口座を借りる形で払込みを行い、その後の法人口座開設に向けて準備を進めるケースが一般的です。
外国銀行の海外支店の口座では、資本金の払込みを行うことができません。払込先は、内国銀行の日本国内本支店(または内閣総理大臣の認可を受けた外国銀行の日本国内支店)である必要があります。
設立後、最大のハードルになりやすい銀行口座開設
登記が完了した後、法人名義の銀行口座を開設する段階で、代表者が日本国外に居住していることが大きな壁になりやすいという実情があります。多くの金融機関では、法人口座開設の際に代表者本人が支店窓口へ来店することを求めており、海外在住のままではこの条件を満たすこと自体が困難です。
この対策として、日本に居住する取締役をあらかじめ選任しておく、あるいは口座開設のタイミングに合わせて来日する計画を立てておくといった準備が必要になります。銀行口座開設全般の実務的なポイントについては、別記事「外国人の会社設立で銀行口座が開けない理由と対処法」で詳しく解説しています。
経営管理ビザを見据える場合の注意点
海外に居住したまま会社を設立した後、日本に移住して自ら経営に携わりたい場合は、経営管理ビザの取得が必要になります。2025年10月の制度改正により、経営管理ビザの取得要件は資本金3,000万円以上かつ常勤職員1名以上の雇用と、大幅に厳格化されている点にご注意ください。事務所についても、バーチャルオフィスではなく独立した事業所の確保が原則として求められます。
会社設立自体は経営管理ビザの取得と切り離して考えることができますが、将来的に日本での経営・在留を見据えている場合は、設立段階からこの要件を意識した会社設計にしておくことが重要です。
外国為替及び外国貿易法(外為法)上の届出
非居住者である個人や外国法人が日本で会社を設立する場合、「国内直接投資」として外為法の規制対象となり、日本銀行を経由して財務大臣・事業を管轄する大臣への届出が必要になる場合があります。事業内容や国籍によっては事前届出が求められるケースもあるため、登記申請の前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
日本国外に居住したまま会社を設立すること自体は制度上可能ですが、印鑑証明の代替書類の準備、資本金払込み用の口座確保、そして設立後の銀行口座開設まで、居住地が海外であることに起因する実務上のハードルがいくつも存在します。国際郵便でのやり取りや翻訳作業も発生するため、余裕を持ったスケジュールで、実務に精通した専門家と進めることをおすすめします。
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